■ 「『産後うつ』は『甘え』です」は危険な嘘 産婦人科医「心に余裕をもって育てられるようサポートを」 | 9/17(木) 18:03配信 |
「『産後うつ』は『甘え』です」。国政選挙に政党の公認を受けて立候補した経験のある人物が、そんな間違った内容のツイートをして、批判を浴びている。産後うつは産婦の10人に一人が苦しむ珍しくない病気で、適切な治療や支援が必要だ。「怒鳴りつけて躾け」は根拠がないどころか、病状を悪化させる恐れもある。産婦人科医の宋美玄さんは、「産後うつに限らず、心身が参っている親を叱って追い詰めるのは、子どものためにもなりません。心に余裕をもって育児できるようにサポートすることが必要です」と呼びかけている。【BuzzFeed Japan Medical/岩永直子】 産後うつとは? 産後のサポート不足も要因に 厚生労働省の母子保健計画「健やか親子21」の資料によると、産後うつ疑いは産婦の10%程度に見られる。日本産婦人科医会の「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」でも産後10〜15%程度が発症するとされている。 厚労省によると妊産婦のうつでは、心身やホルモンバランスの変化や慣れない育児から「自分は母親失格だ」と自分を責める気持ちが起こり、睡眠も取れなくなり、食欲まで落ちる場合がある。 自分を責める気持ちが強くなると「母親失格の自分など、この世にいても仕方ない」などという自殺したいという気持ちが強まることさえある。 「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」が世界中の研究を調べてまとめた産後うつの特徴はこうだ。 精神疾患を病んだ経験や、妊娠中のうつ症状や不安、社会的なサポートの不足で発症しやすくなる 産後数か月以内に発症し、産後4週以内が特に多い。 イギリスの妊産婦死亡の調査で死因のトップが自殺であり、自殺の原因にうつ病の占める割合が多い 日本でも妊産婦死亡に占める自殺の割合は多い 母子心中や赤ちゃん殺しの背景には産後うつ病が関連する事例がある 産後うつ病は、母子関係や長期的な子どもの情緒とその発達にも影響する 母親のうつ病は父親のうつ病にも関連し、周産期における父親のうつ病発症も増加する つまり、妊娠中の不安や母親へのサポート不足が産後うつの原因で、悪化すれば母親の自殺や親子心中、虐待の原因にもなる。子どもの発達や父親のうつ発症にも影響する。 厚生労働省はこうした深刻な問題につながる産後うつ病を早目に発見し、支援や治療に結びつけようと、保健師が生後4ヶ月までの乳児がいる全家庭を訪問する事業「こんにちは赤ちゃん」を行なっている。 国が税金をかけて支援に乗り出すれっきとした病気なのだ。 |