■ 危険性が高い「マダニ感染症」 昨年は過去最多の被害、ペットからの感染も | 6/12(金) 18:05 配信 |
2019年、マダニ媒介感染症の一つ、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の報告が102件と過去最多になった。SFTSは主にマダニに刺されることで発症し、重症化すると死亡することがある。死亡例は50代以上に限られるが、致死率は27%にもなる。ペットへの感染も確認されており、ネコの致死率は60〜70%。西日本を中心に広がりを見せ、専門家は「いつ関東で患者が出てもおかしくない」と話す。その実態に迫った。(取材・文:Yahoo!ニュース 特集編集部) アライグマとその体に付いていたマダニ(右下)。アライグマは外来生物法によって「特定外来生物」に指定されている。鈴木和男さんは「市街地にも生息するので、感染症をヒトのごく近くにまで持ち込む可能性がある」と指摘する 「ほれ、見てみ。大きいのが付いとるわ。柔らかいところにいっぱい付いとるよ」 アライグマの耳もとに付いていたのは、マダニだ。幼ダニは1ミリほどと小さいが、吸血して膨れた成ダニは7〜8ミリにもなる。 和歌山県田辺市のふるさと自然公園センターの鈴木和男さんは、2002年から駆除されたアライグマの体重や性別、繁殖状態などを記録している。その数はすでに5000頭以上。感染症などの調査のため、血液も採取しており、研究者の元でさまざまな検査に活用されている。 「以前、ザンビア共和国(アフリカ)の国立公園に勤めてたことがあって、そこでカバの群れの感染症死を目の当たりにしたんよ。(帰国後)日本でも哺乳類の感染症研究がこれから必要になるはずだと思った。アライグマだけでなく在来種も含めて、感染症の動向を追える検査試料の確保が自分の役目」 鈴木和男さん。アライグマの捕獲の連絡があるたびに車で回収に出向く。往復30分で行けるところもあれば、2時間かかるところも。取材に訪れた日は7件連絡があり、8頭を回収。回収作業だけで5時間以上を要した 2013年、鈴木さんが07年から山口大学共同獣医学部の前田健教授(当時、現・国立感染症研究所獣医科学部部長)に提供していたアライグマの血清から、和歌山県で初めてとなる感染症が見つかる。 マダニが媒介する感染症の一つ、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)だ。 13年1月に前田氏らが国内でSFTSを初確認したことを受け、鈴木さんが集めた大量のサンプルを振り返って調べることになり、判明したという。 2019年、感染報告は過去最多102件 SFTSは、主にウイルスを持ったマダニに刺されることで発症する感染症だ。発熱や全身のだるさ、下痢や腹痛などの症状が出て、重症化すると死亡することがある。これまでの死亡例は50代以上に限られるが、致死率は27%にもなる(国立感染症研究所)。2019年は全国で過去最多の102件の感染報告があった。しかしいまだに治療薬はなく、新型コロナウイルスでも注目される「アビガン(ファビピラビル)」が治験の最終段階にある。 前田氏は、危機感を煽りすぎるのはよくないとしつつも、SFTSを「怖い病気だ」と語る。 「致死率だけでいうと、国内でこれほど怖い病気はしばらくなかった。SFTSは、クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)とよく似たウイルスでマダニが媒介する。クリミア・コンゴ出血熱は発症率20%くらいで、SFTSはほぼ100%。それぐらい怖い病気っていうのが僕らの認識です」 国立感染症研究所獣医科学部部長の前田健氏(写真:石橋俊治) いつ関東で患者が出てもおかしくない 国内での初確認から7年。今のところ、国内で感染が確認されているのは、西日本の23府県と東京都のみ。東京都での感染報告は1例で、患者が長崎県を旅行中に感染したと考えられている。 |