■ 子供の夏風邪侮らない プール熱流行、脳炎のリスクも8/4(土) 10:12配信







NIKKEI STYLE






 夏休みを迎えた子供たちに忍び寄る夏風邪。安静にしていれば治るウイルス感染症が大半だが、今年は脳炎を引き起こすウイルスが多くみられ、注意を促す声もある。予防法や症状の見分け方を知っておこう。
 子供がかかりやすい夏風邪には、プール熱(咽頭結膜炎)やヘルパンギーナ、手足口病などいくつかある。症状には特徴があり、種類によっては重症化の可能性もある。
 国立感染症研究所の調査によると、今年はプール熱が6月から本格的に流行している。アデノウイルスによる感染症で、プールの水の塩素殺菌が不十分だった時代にプールで感染が広がったのが名前の由来だ。38度以上の発熱やのどの痛み、目の結膜炎といった症状が出る。高熱は5日前後続くこともある。
 同研究所感染症疫学センター第4室の藤本嗣人室長は「7月から8月にかけては、ヘルパンギーナと手足口病がピークを迎えようとしている」と注意を促す。
 ヘルパンギーナは熱が急に出て、口の中に水疱(すいほう)性の発疹ができる。水疱は喉の奥にある口蓋垂の周りにもでき、破れると潰瘍になって、激しく痛む。強い痛みが原因で、食べたり飲んだりするのが難しくなる。
 手足口病でも口の中に水疱ができる。名前の通り、手のひらや足の裏にも水疱ができて、発熱がみられることがある。水疱の皮は厚く破れにくく、歩くと痛むことも。主にエンテロウイルスやコクサッキーウイルスによって発症する。
 さらに今年は、手足口病の原因ウイルスとして「エンテロウイルスA71」と呼ばれる種類が多くみられることが分かってきたという。
 藤本室長によると「エンテロウイルスA71は、脳炎を発症するリスクが高い。脳炎を発症すると死に至ったり、まひなどの後遺症が残ったりする例もある」。同ウイルスが原因の脳炎は、2000年前後からアジアで流行するようになり、東南アジアや中国、台湾などで多数の死亡例が出たことで知られている。
 この夏は例年にも増して特別な注意が必要といえるが、夏風邪を防ぐためにできることは「冬のインフルエンザ対策と同じく、うがいと手洗いに尽きる」とナビタスクリニック(東京都立川市)の久住英二理事長は話す。外出から戻ったら、せっけんで手や指を30秒ほどこすり洗いするのを習慣にしよう。
 特に妊婦や小さい子供のいる家庭では、細心の注意が欠かせない。藤本室長は「エンテロウイルスA71に感染しやすいのは0歳児で、特に3カ月未満で起こりやすい」と指摘する。家族を通じて外からウイルスを持ち込まないように気を付けることが重要だ。
 夏風邪にかかった場合は、対症療法が中心になる。「安静にして、解熱鎮痛剤などで症状を抑えながら回復を待つ」と久住理事長は話す。ただし「5日過ぎても症状が改善しなかったり、水分が取れないほど症状が重かったりする場合は、病院を受診してほしい」という。
 夏風邪の発症時に欠かせないのが、脱水症状の予防だ。特にヘルパンギーナと手足口病にかかると口の中が痛むため、つい水を飲むのを控えがちになる。のどの渇きを訴えられない乳幼児は、尿の色が濃くなると脱水のサインだ。「体温並みに温めた経口補水液や、少量の塩を溶かした白湯などを飲んで、十分な水分を取って」(久住理事長)
 藤本室長は「夏風邪は安静にしていれば治る病気だと軽視されがちだが、子供が保育園に通えなくなるなど、意外に影響は大きい。くれぐれも手洗いとうがいを忘れずに、予防に努めてほしい」と話している。
(ライター 荒川直樹)
[NIKKEIプラス1 2018年7月21日付]