■ 子どもの弱視 見逃さないで 3歳児健診がカギ





NIKKEI STYLE









 斜視や強い遠視などによって視力が正常に育たない「弱視」の子どもは50人に1人の割合でみられる。外見からはよくわからず、親が発見するのは難しい。3歳児健診で見つけて治療すれば小学校に入る前に治せるが、健診の体制が十分ではないとの指摘がある。機器を使った簡易検査を受けられる診療所が出てきているほか、厚生労働省は3歳児健診の徹底を自治体に促している。
 「はい、こっち見てね」。北浜こどもクリニック(川崎市)の北浜直院長が取り出したのはカメラのような小型機器。小鳥のさえずりの擬音が流れ、視界の奥の方で光が点滅する。1歳の男児の視線が吸い寄せられた瞬間、検査は終わった。1月に導入した米国製の簡易スクリーナーだ。
 「弱視は近視と異なり、メガネで矯正しても視力が十分出ない」と東京医科歯科大の大野京子教授は説明する。見る力が発達する乳幼児期に治療することが重要で、3歳児健診の視力検査は大きな節目になる。小学校に進む前の就学時健診では、弱視を発見できても、その後の視力向上が見込めない恐れがあるからだ。
 スクリーナーは弱視のリスクを1秒で調べる。操作が簡単で、眼科医でなくても扱える。風邪の症状で北浜こどもクリニックに来た3歳の女児は、3歳児健診で適切な視力検査を受けられなかった。北浜院長がスクリーナーで検査すると、弱視のリスクが高いことが判明。紹介した眼科で片目が弱視であることがわかり、治療を始めた。
 3歳児健診は市区町村が実施する。視力についてはまず家庭で1次検査と問診をする。1次検査を通らなかった子どもに対し、健診会場で保健師らが2次検査を実施するのが一般的だ。「ランドルト環」と呼ぶ輪の1カ所が切れた指標や動物などの絵を使い、見えるかどうかを片目ずつ試す。
 だが、子どもが検査を嫌がるなどして異常を見逃す可能性があるほか、子どもが親や保健師の言うことを理解できなかったり、うまく答えられなかったりする場合もある。
 2次検査を眼科医などの専門家が担うところは少ない。健診方法も各自治体に任され、転居を理由に受けないままの家庭もある。「3歳児健診で弱視が見逃されている例は多い」と国立成育医療研究センターの仁科幸子医師は指摘する。
 こうした実態を踏まえ、日本小児眼科学会は2016年8月、3歳児健診について提言をまとめた。3歳6カ月ごろの検査が効率的であることや保護者への啓発の必要性を指摘したほか、会場でスクリーナーなどの検査機器を導入するよう勧めている。
 厚労省は今春、全国の自治体に3歳児健診で視力検査を適切に実施するよう通知を出した。子どもの目は6歳までにほぼ完成するとしたうえで「3歳児健診で異常が見逃されると十分な視力が得られないことがあると周知すること」と注意喚起した。仁科医師は「通知により検査の精度が高まってほしい」と期待する。
 一方、家庭で気をつけられることもあるという。目を細めたり、首を曲げて見たりするのが目立つ子どもや、片目を隠すと嫌がるなどの反応が見られる場合、弱視の可能性がある。子どものこうした行動などは生後3カ月ごろからチェックできる。該当する項目が一つでもあれば、眼科に相談するなど対処が必要だ。
 特に注意したいのは片目だけ弱視の場合だ。片方の目が見えていると、もう一方の異常に気づきにくい。弱視は6歳までに治すことが望ましいが、就学時健診や小学校入学後にわかったとしても、治療できることもある。仁科医師は「あきらめずにできるだけ早く治療を」と呼びかける。
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