■ 精子もネット注文の時代?! ドナーもオンライン選択 背景に不妊治療の厳しい現状1/9(木) 10:42配信























 子どもはほしいが結婚はしたくない―。東京都内で不動産会社を営む36歳の谷恵さん(仮名)は、そのシングルマザー願望の実現に向け、海外の精子バンクに活路を求めた。オンライン上で精子提供者(ドナー)を選択して注文し、国内の医療機関に送付された精子で人工授精に挑戦。「お見合いのような感覚で、ドナーの育った環境を重視して選んだ。出産が楽しみ」と笑顔で語った。(共同通信=白川愛)

 ▽精子バンク利用で6万5千人が誕生

 谷さんが利用するのはデンマークにある世界最大の精子バンク、クリオス・インターナショナル(以下クリオス社)だ。同社によると、創設は1987年で、現在のドナー数は約千人。米国にも拠点があり、2016年には卵子バンクも始めた。これまで約100カ国の医療機関や個人に販売、6万5千人以上が生まれている。

 ドナーの国籍は欧米が中心で、日本人の登録はない。血液や遺伝性疾患の検査、面談もあり、応募者の合格率は5〜10%だ。顧客は専用サイトでドナーの人種、目や髪の色、血液型を選んで注文。マイナス196度の液体窒素タンクに入った状態で送付される精子を常温で解凍し、付属の容器を使って膣内に注入する。
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 追加料金を払えばドナーの肉声や最近の写真などの情報も得られ、1回分の費用は日本円で約6千〜18万円ほどになる。

 ▽日本進出を目指すわけ

 将来的に日本での展開を目指すクリオス社。日本人ドナーを募り、日本人向けに冷凍保存した精子を販売する構想で準備を進めている。

 19年2月、都内に窓口を開設。日本語パンフレットを作成した。問い合わせが急増したという独身女性や、性的少数者(LGBTなど)を対象にセミナーも開いている。

 「子を持つ選択肢として、クリオスがあることを知ってほしい」。12月中旬、都内での独身女性向けセミナーで、日本事業責任者の伊藤ひろみさん(37)は参加者約10人に語り掛けた。ドナーの選考基準や精子の購入方法を説明すると、「アジア系のドナーはいるか」「出産後に相談できる場所はあるか」と質問が相次いだ。

 50代の女性は、結婚してほしいと願った32歳の娘から「精子バンクを使いたい」と相談されて心配になり、付き添って来場した。安全性の説明を聞き、しっかりした伊藤さんの人柄にも触れて「不安が少し和らいだ。娘の選択をできるだけ応援したい」と語った。