■ ヒアリ 正しい治療法 医療者向けのサイトが話題 地域 2017年9月19日 (火)配信中日新聞






 各地の港で見つかるようになった南米原産の特定外来生物「ヒアリ」に刺された患者の治療法を、名古屋掖済会(えきさいかい)病院(名古屋市中川区)の救急専門医、安藤裕貴さん(39)が病院の医師向けのインターネットサイトに公開した。「毒ヘビやフグと違い、ヒアリ被害は虫刺されの一種。ショック症状に注意し、冷静に治療を」。医療関係者らから転載を求める声が相次ぐなど反響が広がっている。
 「ヒアリに刺された人の治療法は、スズメバチに刺されたときと同じなんだ」
 病院の救急医らが集まる定例の勉強会で、安藤さんが米国の医学書や医学論文を基に21枚の電子資料でまとめた「ヒアリ学」を紹介すると、若手医師から安堵(あんど)の声が漏れた。
 5月下旬に兵庫県尼崎市で国内初のヒアリが見つかってから、報道などで「ヒアリは猛毒」というイメージが先行した。生物学の専門家による生態や特徴についての説明はあったが、人体にどんな影響があるのかという医師として必要な情報は少なかった。
 病院は名古屋港から近く、港で人がヒアリに刺された場合の受け入れ先になると予想されたことから、安藤さんは他のスタッフと知識を共有しようと考え、自宅で資料づくりを始めた。だが、日本に定着していないヒアリの対処方法を知る日本の医師は少ない。そこで注目したのは、ヒアリが定着する米国の医師が執筆した750ページほどの医学書「マイナーエマージェンシー」。虫刺されや耳に入った異物など、緊急性の低い救急患者の処置を記した所にヒアリを特集した項目があった。
 他にも複数の海外の医学論文に目を通すと、ヒアリの「毒」に致死性はないと判明。ハチの毒に似た物質が体内に入ることで、じんましんなどのアレルギー反応であるアナフィラキシーが数%の確率で起き、そのうち、ごくまれに呼吸困難や意識障害といった重篤のアナフィラキシーショックが起きることが分かった。
 アナフィラキシーや、より重篤なショック症状はスズメバチなどに刺された場合でも起きる。名古屋掖済会病院は1978(昭和53)年、東海地方で初めて救命救急センターを開設して以来、虫刺されから脳梗塞まであらゆる救急患者を受け入れており、アナフィラキシーの治療経験も豊富だ。
 安藤さんは、ヒアリに刺されて15分ほどで起きる急性症状に注意することや、抗アレルギー薬での治療など注意点を記した資料を7月中旬、フェイスブック「名古屋掖済会病院・救命救急センター」のサイト「医療者のための正しく恐れるヒアリ学」に公開。今月8日時点で他の記事の約7倍の22万人が閲覧した。「これほど反響があるとは。医学的な知識を持ってヒアリに備え、万一の時に来院する患者の不安を和らげたい」と話す。