■ 抗体が感染を防ぐとは限らない! 免疫学者が指摘する「ワクチン待望論の“深刻な誤解”」





7/19(日) 17:00配信


文春オンライン



ウイルスの感染を促進する「悪玉抗体」
 宮坂氏によれば、「抗体」に関しても、さらに大きな誤解があるという。

〈「抗体」には、(1)「善玉抗体(中和抗体)」、(2)「悪玉抗体」、(3)「役無し抗体」の3つがあります。

(1)は、ウイルスを不活化し、細胞への感染を防ぐ「抗体」です。
(2)は、逆にウイルスの感染を促進し、病気を悪化させる「抗体」です。
(3)は、ウイルスを不活化することも、感染を促進することもない「抗体」です。

 要するに、ウイルスに感染してできるのは、「善玉抗体」とは限らないのです。例えば、エイズ感染でできるのは、大半は「役無し抗体」です。そのため、有効なワクチンは未だ開発されていません。

「悪玉抗体」の例としてよく知られているのは、ネコ・コロナです。米国でワクチン開発が試みられたのですが、接種した方の症状が悪化しました。「抗体」はできても「悪玉抗体」ばかりだったのです。このような現象を「抗体依存性感染増強現象(ADE)」と呼んでいます〉



回復者のうち「善玉抗体」の保有者は2割程度
 さらにこう指摘する。

〈新型コロナでも、重症者の方が軽症者よりも「抗体量」が多かったという報告があります。これは、「悪玉抗体」ができている可能性を示唆しています。新型コロナからの回復者のうち「善玉抗体」の保有者は2割程度だったという報告もあります〉

 新型コロナでは「善玉抗体」だけができるわけではないとすれば、「抗体検査」への過剰な期待も禁物だ。

〈「抗体保有者」に「免疫パスポート」を発行する提言もなされていますが、通常の抗体検査は、「善玉」「悪玉」「役無し」を区別できません〉

 では「検査」はまったく無意味なのか。宮坂氏は代わりにこう提言する。

〈私が有効だと考えるのは、「キットによる抗原検査」です。(略)時間も費用もかかるPCR検査と比べて、「キットによる抗原検査」は、安価で迅速にできます。PCRより感度は低いのですが、多くのウイルス(抗原)を排出する「スーパースプレッダー」を検出し、感染拡大を防止するには、これで充分かもしれません〉

 免疫学の第一人者である宮坂氏が、「新型コロナ」に関する「免疫」のしくみや「検査」のあり方を解説した「 『抗体検査』でスーパースプレッダーを検出せよ 」の全文は、「文藝春秋」8月号および「文藝春秋digital」に掲載されている。

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