■ 血清療法の問題点

破傷風やジフテリアの血清療法は多くの人々の命を救った画期的な治療法でした。
しかしこの治療法にも次第に大きな弱点があることがわかってきました。
いわゆる「血清病」です。
馬に毒素を注射し、その血液の上澄み液の血清の中にできている抗体は「馬の抗体」であって「人間の抗体」ではありません。異物です。異物を人体に入ると異物を排除しようとする免疫反応が起こります。この反応が強く起こると人体に有害な反応、アレルギーが起こることになります。血清病の場合はV型アレルギ、アルサス型と呼ばれます。
治療用の血清には、lgGという抗体が多く含まれますが、いろいろな種類のlgGが毒素のいろいろな部位にくっついて抗原抗体複合体というおおきな塊を作り出し、これが血液中の補体という成分を刺激して活発化させます。その結果白血球の好塩基球や好中球を引き寄せて「炎症」を引き起こし、抗原抗体複合体の集まっている組織の部分を破壊します
多くの人々の命を救ったすぐれた治療である血清療法もその重篤な副作用を常に念頭に置くことが必要です。
やはりどんな病気にも完全な治療法はないのです