■ 破傷風と北里柴三郎

4種混合ワクチンに含まれている破傷風。
かつては日本でも猛威をふるい恐れられた病気でしたが、現在では年間100人前後の患者数となっています。内訳も50歳以上の破傷風ワクチンを受けていない世代がほとんどですからワクチンの効果は絶大といえるでしょう。
破傷風菌は世界中のどこの土壌の中に「芽胞」として潜んでいます。
破傷風菌自体は空気に触れるとすぐ死んでしまいますが、この「芽胞」という形になると、いかなる環境にも耐えうるようになりますので永久に地球上からいなくことはありません。
破傷風菌の芽胞が一旦傷口から入ると、そこは空気を接していないため生き返って動き始めます。菌はあまり増えなくてもテタノスパスミンという強力な神経毒を作り出します。
この毒素は末端の運動神経の中に入り込み、どんどん上のほうへ登ってゆき、脳に達します
そして神経の興奮を抑える回路の神経細胞の働きを麻痺させてしまい、その結果全身の筋肉が固まってしまう硬直と呼ばれる状態になり、呼吸もできなくなって命を奪います。その間意識は失われませんからまさに地獄の苦しみを味わうことになってしまいます。
日本ではけがをしたときに問題になるだけですが、海外ではまだまだ破傷風で命をなくす人々は少なくありません。
さてこの破傷風の菌の培養を世界で初めて成功した研究者が北里柴三郎です。
彼はこの菌がいる上澄み液に毒素があると考え、その毒素が破傷風の本体であると気が付きます
そしてこの毒素を動物にある程度あらかじめ入れておくと、大量の毒素にさらされてもその動物は病気にならない、またこの病気にならない動物の血液成分をほかの破傷風になった動物に入れると破傷風が治ることを発見しました。現代の抗体と呼ばれる物質の発見です(彼は抗毒素委と呼びました)
これが血清療法と呼ばれるもので、毒蛇やマムシの咬傷の際にも応用されています
また破傷風の予防としてのワクチンの開発にもつながりました