■ あらためて ワクチンは必要なの?

単に「ワクチンは必要か不要か」を議論することは何も意味はありません。
それは医療に薬が必要か、手術が必要か、を議論することと同じです
特に感染症という人間が絶対逃れることができない病気に対抗するための強力な武器であることは忘れてはなりません
 ワクチンにはいろいろありますが、いずれも感染して病気になった時に治療が難しいか治療できても後遺症が残ったり命をなくす恐れがあるものです
一方病原体は無数にいますから、かかっても問題ない病気に対してはワクチンは必要でありません

また、どんなに効果があるワクチンでも、受ける必要がないワクチンもあります
例えば狂犬病ワクチンは、今の日本に住んでいる限り接種する必要がないワクチンです。
しかし日本以外の国ではまだ狂犬病はたくさん発生していますし、感染源が犬だけとは限らずコウモリ、キツネ、タヌキなどほかの生き物からも感染しますので、海外に行かれる方は現地の状況に応じて接種を考える必要があります
 また、黄熱ワクチンも黄熱病は日本では全くない病気ですが、流行を繰り返している地域を訪れる方は接種しておくべきワクチンです
 一方、定期接種や任意接種に組み込まれているワクチンは、現在接種する必要があると考えられているワクチンです
 しかしこれらのワクチンのいくつかは、時代とともに不要になる日がいずれ来るでしょう
かつて死の病であった天然痘が撲滅され、ワクチンが不要となったと同様です。
病気の感染の機会がなくなればワクチンを接種する必要は当然ありません
 ワクチンの必要性は時代とともに変わり、また、それぞれのワクチンによって異なりますので、常に私たちはワクチンの必要性をいろいろな角度から確かめていく態度を持っていることが大切です
 
大切なのはそれぞれのワクチンがちゃんとした根拠に基づいて「今現在」必要なのか不要なのかを決めることです。

たとえば、近年は経済のグローバル化がすすみ人間の移動の速さと数がかつてないほど大ききなっています。それに伴って外国から日本に持ち込まれる「輸入感染症」、あるいは日本から外国に持ち出して肝炎を広げる「輸出感染症」にも目を向けなければなりません
さらに世界的に抗生物質の耐性化が増えている状況は、ワクチンの重要性が今後ますます増大すことは間違いありません
 我々医療従事者は真摯な態度でワクチンに関する情報を患者さん提供するよう最大限の努力をする義務があります
 いつも同じ根拠や信念などに基づいてワクチンの必要性を論じることだけは避けたいものです