■ ワクチンはどのくらいの効果があるの? |
ワクチンの効果がどのくらいあるのか、はワクチンを受けるときに当然気になります 人間は目に見える効果にはすぐ納得できますが、目に見えないものに対しては納得できにくい特性を持っています 目の前で苦しんでいて緊急の手術がすぐに必要だったり、感染症にかかって症状が悪化したりしているときは、多くの人は迷わず医療者の治療に納得して向き合います。 ワクチンの場合は目の前にいる全く健康な小さな赤ちゃんや元気はつらつとした大人が対象になることが多くなります (老人の場合は病気にかかかりやすいことが理解できますので問題ないのでしょう) この両者の差は歴然としています はじめからこのような差がある医療行為としてのワクチンの重要性、必要性を啓発することは関係者に相当の努力を必要とさせています。 実際、ワクチンが予防しようとする病気にどのくらい効果があるか、その有効性を調べるにはかなり複雑で手間のかかる作業が行われています 具体的には、現場での疫学的な調査、大規模な予防効果試験(臨床試験)、実験室でのデータ(抗体価の測定)などがあります そのような多大な作業を通じて、それぞれのワクチンの有効性が示されています ヒブ ヘモフィルス インフルエンザ菌b型の感染による重症化を防ぐためのヒブワクチン。 2008年に導入され2013年から定期接種化になりました 5歳未満に血液や髄液に菌が入り込む侵襲性感染症の推移 髄膜炎は2011年 約150人から2014年 にはゼロ 髄膜炎以外は150人から 約30人 (厚労省科学研究事業研究班) 劇的にワクチンの効果があったことがわかります また重篤なワクチンに直接関係した副反応の報告もありません しかしまだ問題は残っています 5歳以上の子どもは免疫が自然についてきますが、もともと別の病気で免疫が弱い子どもたちには5歳を超えてもワクチンの接種を受けたほうがよい b型以外の菌による重症感染症が今後増える可能性がある(ヒブワクチンは効果がない) しかし大切なのは、インフルエンザ菌はいつもごく普通にのどや鼻に住み着いていて、侵入の機会を狙っている、ということです そして一度侵入されたら、後遺症をのこしたり命をなくしたりして退治する治療は困難を極めます それは侵入した場所が薬が届きにくいということと細菌自体が薬に抵抗するようになってきているからです 肺炎球菌 肺炎球菌ワクチンが2010年に導入され2013年から定期接種化になりました 5歳未満に血液や髄液に菌が入り込む侵襲性感染症の推移 髄膜炎は2011年 約100人から2014年 には40人 髄膜炎以外は約900人から 約500人 (厚労省科学研究事業研究班) 劇的にワクチンの効果があったことがわかります また重篤なワクチンに直接関係した副反応の報告もありません しかしヒブと同様、まだ問題は残っています 5歳以上の子どもは免疫が自然についてきますが、もともと別の病気で免疫が弱い子どもたちには5歳を超えてもワクチンの接種を受けたほうがよい ワクチンでカバーされない菌による重症感染症が今後増える可能性がある 肺炎球菌はインフルエンザ菌と同様にいつもごく普通にのどや鼻に住み着いていて、侵入の機会を狙っています 百日咳 1940年代に国内で年間10万人以上が百日咳に罹患し,その10%が死亡していました。 1968年にDPTワクチン(ジフテリア+百日咳+破傷風)が定期接種として導入後,患者数は激減しました。しかし,1975年にワクチン接種後に2人が亡くなったため,DPTワクチンの接種は中止されました。 3か月後に再開されたものの,接種率は大幅に低下し,1979年には年間1万3000人の患者と40人以上の死者が報告される結果となりました。 それまで使われていたのは、百日咳菌をそのまま不活化する全菌ワクチンでしたので、百日咳菌の一部のみを利用した現在の無細胞性DPTワクチン(DTaP)が開発されました 1981年にDTaPの接種が開始されると1988年ごろには以前の500人前後の発症数にもどりました ジフテリア 四種混合ワクチンとして普及しているため日本でのジフテリアの発生は少ない (平成11年に患者ひとり、12年に死亡ひとり、以後はゼロ) しかし今後ワクチンの効果が年齢とともに低下してくると、外国から侵入したジフテリーやウシやヒツジなどの動物などに巣食うジフテリーから感染する機会が増えてくることが懸念される また、1990年のソビエト連邦崩壊時にワクチンが供給不足になり、そのためジフテリアの流行が起こって12万以上の患者と4000人以上の死者を出したことはワクチンの重要性を再認識させられた |