■ 心肺蘇生ガイドライン2020登場!


2020/11/05
薬師寺 泰匡(薬師寺慈恵病院)
循環器
心肺蘇生
CPR
ガイドライン
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 米国心臓協会(AHA)の心肺蘇生ガイドラインが新しくなり、10月21日、全世界に公開されました。フリーアクセスとなっておりますので、ぜひご確認いただきたいと思います。ハイライト版は、日本語訳もされ「 CPRおよびECCのガイドライン」として公開されています。


 心肺蘇生ガイドラインは、2000年に国際ガイドラインが作られて以来、5年ごとに改訂されてきました。2015年からは、改訂事項がまとまり次第アップデートされています。エビデンスの積み重ねとともに、推奨は日々変わるのです。

 例えば、「2回の電気ショックでもVF/VTが続く場合はアミオダロン300mgを投与する」とされていましたが、2018年に「アミオダロン300mgかリドカイン1〜1.5mg/kg」と変更されました。また2019年のアップデートでは、CPR中は「バックバルブマスク(BVM)換気でも高度な気道確保でもよい(高度な気道確保は訓練を受けた専門家がいれば)」とされたほか、アドレナリンの使用(1mgを3〜5分ごとに投与)が推奨される文言が入りました。2020年上半期には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が疑われる、または確定した患者の蘇生アルゴリズムが公開されたのが記憶に新しいところです。

 今回の変更では、手技的なものについて大きな変更はありませんでしたが、2010年に「救命の連鎖」に仲間入りした心拍再開後の集中治療に加え、回復期の治療も「救命の連鎖」に加わりました。リハビリテーションや退院後のサポートなども含めて、地域社会に復帰していくことが大事であるというメッセージだと思います。また、除細動の適応がない場合にアドレナリンを使用することが強調されています。しっかり使っていきましょう。その他、補助呼吸の回数が変更されています。特に小児では注意してほしいと思います。

成人への補助呼吸 5〜6秒に1回→6秒に1回(1分間に10回)
小児への補助呼吸3〜5秒に1回→2〜3秒に1回(1分間に20〜30回)

BVMは「どう」してる?
 話が変わって申し訳ないのですが、皆さんは普段、BVM(バックバルブマスク)を使用しますか? デンマークのアンビュー社の製品が知られているため、「アンビューバッグ」と呼ばれることが多いですが、まぁ、好きに呼んでください。バッグマスクでもいいです。僕個人としては、商品名を一般名化するのは、ジョアに失礼だな(ヤクルト強い)とか、例えるときもいつもオロナミンCでええんかな(デカビタCよく飲んだよ)とか、いろいろ思うところもあります。ボスミンなどは完全に市民権を得ており、どう見ても商品名はアドレナリンなのに、毎度毎度「ボスミン」と呼ばれています。「そろそろお口チャックしなさい」の「チャック」すら商標なので、世の中は怖いです。お口チャックします。

 で、BVMなのですが、みなさんはこれで換気をするときに、BVMを「もむ」といいますか? 「押す」といいますか? 動作としては手指の屈曲なので、握るような動作になるのですが、さすがに「BVMを握る」はおかしい。しかしこれはどう表現したものか。実は、前職のボスがBVM使用中に突然聞いてきたのです。

「あんな、みんなこれ、もむ言うてる? 押す言うてる?」

 あぁ、確かに、自分はいつも何て言ってるだろう。6秒に1回もんでください? 押してください? 僕はもむ派かもしれません。押すって、なんか押し込むようなイメージがあるので……。こんなもん正解もないですし、BVMかアンビューかと言うくらいどうでもいいことではあるのですが、なんとなく、BVMの回数を指導するときになんて言おうかな……なんて思いながら、新しくなったガイドラインに目を通したのでした。