■ rh血液型

日赤
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種類[編集]

赤血球膜の抗原により判定される。現在は40種以上の抗原が発見されているが、輸血の際の副作用の関係でD抗原、C/c抗原、E/e抗原で判定する場合が多い。便宜上、D抗原陰性の場合をdで表すこともある。この3つの抗原のタイプによって、CDe、Cdeなどのように表記する。ただし、C抗原とE抗原に対する抗体はD抗原に対する抗体と比較して免疫反応が弱く、大きな問題とはならないため、一般的には、D抗原の有無で陽性・陰性を表記する。免疫原性は D > E > c > C > e の順に強い。

ABO式と異なり自然抗体は形成されないため、血清中の抗体を検査して判定することはない。また極まれにD以外の抗原を持たない「D−−」や上に記した5つの抗原を全部持たない「Rh null(アールエイチナル)」というものがある。ちなみにRh nullをもつ日本人は6人前後だという。

日本人での頻度はCCDee (43%)、CcDEe (38%)、ccDEE (10%)、ccDee (0.1%)、CCDEE (0.05%) の順となっている。

検査手順[編集]

抗D血清と患者血球浮遊液を混ぜ、900〜1,000 G (3400 rpm)、もしくは100〜125 G (1000 rpm) で遠心して凝集の有無を見る。


試薬・追加検査

D陽性

D陰性、Weak D、Del

Partial D

直接クームス試験陽性

D不適合輸血後、キメラ・モザイク

抗D 4+ 0 3+以下 4+ 部分凝集
Rhコントロール 0 0 0 3+ 0
追加検査 不要 D陰性確認試験(陽性ならWeak D、陰性ならD陰性、Del) 他の抗D試薬との反応 生食との反応を見て、陽性なら血球にIgMが結合している 患者情報の確認

Weak D[編集]

抗原エピトープの量が普通よりも少ないので凝集も弱い。 確定のため被凝集価測定も必要となる。

Del[編集]

抗原エピトープがWeak Dよりもさらに圧倒的に少ないので、そのため最終的に抗Dを用いた吸着解離試験でないと確定できない。

Partial D[編集]

Partial Dはモノクローナル抗Dを使用すると凝集が弱いか陰性になることがある。これは抗原エピトープの一部欠損によるもので、試薬の種類によって反応性が違う。そのため確定には複数の抗D試薬が必要となる。

直接クームス試験陽性の場合[編集]

自己抗体保有患者では、Rh判定が困難な場合があり、それがIgGかIgMかで対応が異なる。

IgG自己抗体が感作している場合[編集]

ポリクローナル抗D試薬は高蛋白なので、D抗原の有無と関係なく凝集が起きることがある。

この場合は蛋白濃度の低いIgMモノクローナル抗体を使えば正常に判定できる。

IgM自己抗体が感作している場合[編集]

この場合もD抗原の有無と関係なく凝集が起きることがあるので、

0.2MのDTT溶液で赤血球を処理(血球とDTT溶液を1:4で混ぜ37℃で30〜45分間反応)すれば判定が可能となる。

なおDTT処理でKell抗原が破壊されるため、これを調べれば処理が適切か分かる。

輸血の対応[編集]

受血者の場合、単純に抗D試薬の直接凝集反応で陽性ならD陽性、陰性ならD陰性として扱う。

供血者の場合、ポリクローナル抗Dを用いたD陰性確認試験(間接抗グロブリン法)で陰性の場合のみD陰性、それ以外はすべてD陽性として扱う。

D抗原を持たないRh−型の人にRh+型の血液を輸血すると、血液の凝集、溶血等のショックを起こす可能性がある。またRh−型の女性がRh+型の胎児を妊娠すると、病気・流産の原因となることがある。なお、ABO式血液型と違い、Rh−型の人はD抗原の自然抗体を持たない。そのため、Rh型不適合妊娠による胎児への影響は、第2児以降の出産かD抗原に何らかの形で感作した場合にしか起こらない。ABO式血液型不適合で起こりにくい胎児への悪影響がRh型で起こるのは、抗A抗体や抗B抗体がIgMで胎盤通過性を持たないのに対し、抗D抗体がIgGで胎盤通過性を持つからである。なお、予防のために初回出産時に抗Dグロブリン製剤を投与し、母体が抗D抗体を産生しないように予防するのが一般的である。
Rh+(D抗原陽性)
Rh−(D抗原陰性)

Rh(D)免疫グロブリン (RhIg) の投与量計算[編集]

妊婦の場合[編集]

Rh(D)免疫グロブリン (RhIg) はRh(−)の妊婦がRh(+)児を出産した際に72以内に投与され、抗体産生を防ぐ。

RhIg1バイアル (300 µg) あたり30 mLのRh(+)胎児血球に効果があるので

例えば体重50 kg、循環血液量70 mL/kg、胎児血球が2.5%残存しているとすると

50 kg × 70 mL/kg × 0.025 = 87.5 mLの血球が母親体内にある。

87.5 ÷ 30 = 2.92なので、4バイアル必要。(小数点以下を四捨五入+1とする)

輸血の場合[編集]

Rh(−)の患者にやむを得ずRh(+)製剤を輸血した場合に投与され、抗体産生を防ぐ。

RhIg1バイアル (300 µg) あたり15 mLのRh(+)成人血球に効果があるので

例えばRCC1単位に100 mLの血球があるとすると

100 ÷ 15 = 6.67なので、8バイアル必要。(小数点以下を四捨五入+1とする)

半減期[編集]

半減期は21日となっているので、例えば63日後には12.5%が体内に残る。

歴史[編集]

1937年にオーストリアの医学者カール・ラントシュタイナー及びアレクサンダー・ヴィナーがD抗原を発見して、1940年に発表したのが始まり。発見から発表まで約3年かかっているのは、抗Rh血清の製造法改善に時間がかかった為である。Rhは、実験に使用されたアカゲザル(独: Rhesusaffe、英: Rhesus monkey)の頭文字から。

割合[編集]
日本国民の約99.5%はRh+である[1]。
バスク人にはRh−が多い(表現型で〜35%、遺伝型で60%)[2]。



血液型

概要[編集]

血液型と性格との関連性については「血液型性格分類」を参照

抗原は、赤血球・血小板・白血球・血漿などに存在し数百種類が知られており、その組み合せによって決まる血液型は膨大な数(数兆通り以上という説もあり)になる。世界を捜しても、一卵性双生児でもない限り自分と完全に同じ血液型をしている人はいないとすら言われる。この性質を利用して畜産、特にサラブレッド生産の分野において血液型が親子関係の証明に使われていた(現在は直接DNAを鑑定する手法が用いられる)。

輸血をする場合、ABO式など一部の分類は自然抗体が形成され、型違いの血液を混ぜると凝集や溶血が起きるため、型合わせする必要がある。また、血液型によって、凝集や溶血反応はそれぞれである。反応が一番激しいとされているのは、jr(a+)型である。

主な分類方法[編集]

ABO式血液型[編集]

詳細は「ABO式血液型」を参照

赤血球による血液型の分類法の一種。1900年から1910年ごろにかけて発見された分類法で、最初の血液型分類である。
A型は赤血球表面にA抗原を発現する遺伝子(= A型転移酵素をコードする遺伝子)を持っており、血漿中にB抗原に対する抗体が形成される。
B型は赤血球表面にB抗原を発現する遺伝子(= B型転移酵素をコードする遺伝子)を持っており、血漿中にA抗原に対する抗体が形成される。
O型はどちらの遺伝子も持っておらず、赤血球表面にA/B抗原は無い。血漿中にA抗原、B抗原それぞれに対する抗体が形成される。
AB型は赤血球表面に両方の抗原(A抗原およびB抗原)を発現する遺伝子を持っており、血漿中の抗体形成はない。[1]

Rh式血液型[編集]

詳細は「Rh因子」を参照

赤血球膜の抗原による分類法。1940年ごろから明らかにされた。現在は40種以上の抗原が発見されている。その中でもD抗原の有無についての情報を陽性・陰性として表示することが最も多い。すなわち、Rh+(D抗原陽性)とRh−(D抗原陰性)である。

Rh−型の人にRh+型の血液を輸血すると、血液の凝集、溶血等のショックを起こす可能性がある。Rh−型の女性がRh+型の胎児を妊娠することが2回以上になると病気・流産の原因となることがある。日本人の99.5%はRh+である[2]。

ヒト白血球型抗原[編集]

詳細は「ヒト白血球型抗原」を参照

白血球の抗原の分類によるもの。現在では血液に限らず、組織の適合性に関わる情報として用いられるようになっているものである。ヒトの遺伝子上で白血球の抗原に関わる部位は、主要なものだけでもA,B,C,DP,DQ,DRの6箇所があり、それらの部位のタイプの組み合わせは数万通り以上あると言われており、結果として、特に血縁関係でもない限り人間同士でHLA型が完全に一致することは極めて稀である(主要組織適合遺伝子複合体も参照のこと)。

ダフィー(Duffy)式血液型[編集]

赤血球表面の抗原(糖鎖)の多様性による分類法。Fy(a)とFy(b)の2つの抗原の有無によって、Fy(a+b+), Fy(a+b-), Fy(a-b+), Fy(a-b-)の4つの血液型に分けられる。三日熱マラリア原虫はヒトの体内で赤血球表面にあるFy(a)とFy(b)の2つの抗原に結合して赤血球に侵入、増殖する。Fy(a)とFy(b)のどちらの抗原も持たないFy(a-b-)型は三日熱マラリアに抵抗性を示す。Fy(a-b-)型はアフリカのサブサハラの三日熱マラリア流行地に遺伝的起源を持つ人に非常に多いのに対して、それ以外の地域に起源を持つ人にはほとんど存在しない。なお、熱帯熱マラリア原虫は三日熱マラリア原虫とは赤血球への侵入様式が異なるためダフィー式血液型は熱帯熱マラリア抵抗性とは関係がない。

その他の分類方法[編集]

MN式、P式など約300種類が発見されている。分類法としてはそれほど一般的ではない。遺伝関係の確認や警察の鑑識においてなど、可能な限り詳細な情報が必要な時に用いられる。
Kidd式血液型
Diego式血液型
Kell式血液型
Lewis式血液型

高頻度抗原を欠く稀な血液型[編集]

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適合率が約1%以下の型。さらにT群(適合率0.01%以下)、U群(それ以外)に分けられる。

また、一人の人間が複数の血液型を持っている場合は、「血液型キメラ」と呼ばれる(例:A型99% AB型0.1%等)。この血液型は70万人に1人程度といわれている[3]。

T群[編集]
Bombay(Oh)
para-Bombay
-D-(バーディーバー)
K0(ケーゼロ)
p(スモールピー)
Rh null
I(-)

U群[編集]
S+s-
Duffy(a-b+)
Diego(a+b-)
Jra(-)

などがある。

適合性[編集]

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赤血球[編集]





赤血球の適合性チャート
O型の人はA,B,AB型の人に与えることができる。A型,B型はAB型に与えることができる。AB型はどこへも与えることができない。
赤血球適合表[4][5]


受血者の血液型

ドナーの赤血球は以下の型のいずれかでなければならない:

O− O−
O+ O− O+
A− O− A−
A+ O− O+ A− A+
B− O− B−
B+ O− O+ B− B+
AB− O− A− B− AB−
AB+ O− O+ A− A+ B− B+ AB− AB+

血漿[編集]

血漿の適合性に関しては、赤血球の適合性チャートとは反対向きの関係があり、AB型からA,B,O型に与えることができ、A型B型からO型に与えることができる。O型はどこへも与えることができない。





血漿の適合チャート
AB型からA,B,O型に与えることができ、A型B型からO型に与えることができる。
血漿の適合表


受け手の血液型

ドナーの血漿は以下の型でなければならない:

AB AB
A A or AB
B B or AB
O O, A, B or AB

これらの性質を利用し、緊急時の危機的出血で血液型を確定できない場合には、交差適合試験抜きでO型の濃厚赤血球、AB型の新鮮凍結血漿や濃厚血小板を使う。 しかし輸血前には必ず患者検体を確保し、後追いで検査を進める。また、輸血経過を記録し、使用済み製剤も回収して保存する。同意書は輸血後に確保してもいい。

血液型の発見と歴史[編集]

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1900年、オーストリアの医学者カール・ラントシュタイナー(Karl Landsteiner, 1868-1943)によって初めて血液型が発見され、翌年の1901年に論文発表された[6]。型名は「A型、B型、C型」とされ、自身の血液型をA型と名付けた。
1902年、アルフレッド・フォン・デカステロとアドリアノ・シュテュルリによって第4の型が追加発表された[7]。
1910年、エミール・フライヘル・フォン・デュンゲルンとルードビッヒ・ヒルシュフェルドにより、第4の型にAB型という名称が与えられ、「C型」とされていた型の名称はO型に変更された[8]。
1937年、ラントシュタイナーおよびアレクサンダー・ヴィナーが、アカゲザルを用いた実験によってD抗原を発見、それを1940年に論文発表した[9] 。アカゲザルは英語での通称がRhesus Monkeyであるため「Rh因子」と呼ばれるようになった。

血液型と性格[編集]

詳細は「血液型性格分類」および「ブラッドタイプ・ハラスメント」を参照

科学的には血液型と性格に関係があるとはされておらず、現時点で知られている血液型性格分類はいずれも正しいとは認められていない[10]。だが1970年代から2000年代前半にかけて、多くのテレビや書籍が根拠なく分類を広めたため、いまだに血液型と性格の関連性を信じている人もいる[11]。血液型性格分類が広まっているのは、日本とその影響を受けた韓国、台湾といった一部地域だけであり、それ以外の地域では性格と血液型を関係づける習慣がなく、日本の血液型性格分類は奇妙に思われている[12]。そもそも血液型への関心自体が薄く、自分の血液型を覚えていない人も多い(輸血が必要な時などは、その場で血液型検査が行われる)[13]。

血液型によって人の性格を判断し、相手を不快や不安な状態にさせる言動はブラッドタイプ・ハラスメント(通称ブラハラ)と呼ばれ、近年になり社会問題として取り上げられるようになった[14]。採用試験の応募用紙に血液型の記入欄があったため、改善するよう労働局から指導された企業もある[15]。厚生労働省は「血液型は職務能力や適性とは全く関係ない」と呼びかけている[15][16]。

血液型性格分類に科学的根拠がないとされるにもかかわらず当たっているように感じる理由として、以下の心理現象が挙げられている。
バーナム効果。誰にでも当てはまるような曖昧で一般的な性格をあらわす記述(他人から好かれたいと思っているなど)を、自分だけに当てはまる正確なものだと誤解してしまう現象[17]。
確証バイアス。自分の信念を裏付ける記述のみを重視し、それに反する情報を軽視してしまうという現象[18]。
予言の自己成就。根拠のない記述であっても、それを信じて行動するとその記述通りの結果が生じてしまうという現象[19]。

血液型と体質[編集]

血液型と病気の関連性については1980年代には持てはやされていたが、ヒトゲノム計画が終りつつあった2000年に、科学雑誌『Nature』にて総説が掲載され、その内容は「胃腸管に関するいくつかの形質に弱い相関が確認できるが、血液型と疾患の相関については再現性よく示されたものは無い」というものであった[20]。その後の研究では、健康面(ストレス抵抗性や病気のリスク)へ影響があるという報告は存在している[21]。