■ ワクチンの副反応2014.12.23

@ 副反応と副作用
治療のために使った医薬品によって起こる、人体に有害な反応を副作用といいます。
一方、副反応とはワクチンを使って起こる有害な反応に限って使われる言葉です。
諸外国では両者を区別していないところもあります。

A ワクチンと副反応
ワクチンを受ける時に心配なのはいわゆる「副反応」です。
ふつうの医薬品は病気を治すために使われますが、ワクチンは「健康」である人にあえて異物を与えていますので「健康でなくなる」ことは不安になって当然でしょう。
一口に副反応といっても、その種類や程度にはさまざまなものがあります。
また、ワクチンを受けた後にいろいろな症状が起きた場合、その症状が本当にワクチンが原因のものなのか、他の病気が起こる時と重なったものなのかはっきりしないことが少なくありません。

B 副反応が起こる原因
ワクチンにはいろいろなものが含まれています。(参考 表http://japanvaccine.co.jp/patient/vaccine_knowledge/safety.html
したがって副反応が起こった時は、どの成分でも、関係している可能性があります。

C 副反応の種類
主な副反応には次の様なものがあります。(参考 表http://japanvaccine.co.jp/patient/vaccine_knowledge/safety.html

【主なワクチンの副反応】
BCGワクチン • 腋窩(えきか)リンパ節が腫れることがある。
• まれに骨や全身にBCGによる病変をきたすことがある。
ポリオワクチン
*2012年9月以降、定期接種は生ワクチンから不活化ワクチン(IPV)に変更されました。 [不活化ワクチン(IPV)の場合]
• 生ワクチンでみられた麻痺や排便によるウイルス感染の心配はない。
• ごくまれに、アナフィラキシー様症状や、海外ではADEM(急性散在性脳脊髄炎)の報告がある。
[生ワクチンの場合]
• 接種後、早い時期に下痢を認めることがある。
• 接種して2〜4週間後に、まれに麻痺が起こることがある。
• ワクチンウイルスが便を介して他人にうつり、まれに麻痺を起こす。
ロタウイルスワクチン • かつてのワクチンは腸重積症(腸閉塞の一種)が多く起こったため、発売中止になったが、現在のワクチンはそれよりも安全な製剤であることが確認されている。
• 腸重積のリスクについては、国内外で市販後調査が継続されている。
Hibワクチン • 局所反応として、赤くなる・腫れる・しこりになる場合がある。
• まれに発熱することがある。
肺炎球菌ワクチン • 局所反応として、赤くなる・腫れる・しこりになる場合がある。
• 発熱や発疹が起こることがある。
麻疹(麻しん)ワクチン • 接種後5〜14日後に発熱や麻疹様の発疹が起こることがある。
• まれに熱性けいれんが起こる。
• ごくまれに脳炎や脳症の報告がある。
風疹ワクチン • 発熱、発疹、リンパ節の腫れ、関節痛などが認められることがある。
MRワクチン(麻疹・風疹混合のワクチン) • 接種後4〜14日の間に、発熱、発疹が認められることがある。
• まれに熱性けいれんが起こる。
• ごくまれにアナフィラキシー様症状、急性血小板減少性紫斑病、脳炎、けいれんなどが生じることがある。
おたふくかぜワクチン • 発熱、耳の下(耳下腺)が腫れることがあるが、おおむね症状は軽く、数日で治る。
• まれに無菌性髄膜炎を起こすことがある。
• ごくまれにアナフィラキシー様症状、急性血小板減少性紫斑病の報告もある。
みずぼうそうワクチン • まれに発熱、発疹が認められる。
DPT三種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン) • 接種部位が赤くなったり、腫れたり、硬くなることがある。
• 発熱や不機嫌が認められることがある。
• 接種2回目以降のほうが、初回接種よりも接種局所反応が認められる頻度が高い。
日本脳炎ワクチン • 発熱、注射局所に紅斑・腫れ・痒み・発疹などがみられることがある。
• 極めてまれにショック症状やアナフィラキシー様症状などが起こるという報告もあるが、ワクチンとの関連性は明らかになっていない。
インフルエンザワクチン • 局所反応として、赤くなる・腫れる・痒みなどが起きることがある。
• 全身反応として、発熱、悪寒、倦怠感、嘔吐などが出ることもある。
• いずれも2〜3日で消失。
• まれに過敏症として発疹、じんましん、紅斑、そう痒などがある。
HPVワクチン(子宮頸がん予防のワクチン) • 局所反応として、痛み・痒みが起こることがある。
• 全身反応として、疲労感や頭痛、吐き気・嘔吐、下痢・腹痛などが起こることがある。
• まれにショック症状やアナフィラキシー様症状、血管浮腫が報告されている。

D 副反応によって健康被害が起きた時の補償制度
ワクチン接種の健康被害が起きてしまったら?
もしもの場合に備えた補償制度があります。
人の健康や命は何物にも代えられるものではありませんが、救済措置があることも知っておきましょう。
• ワクチン接種の健康被害に備えて、国やワクチンを製造しているメーカーが金銭による補償制度を設けています。
• ワクチンは法律によって「定期接種」と「任意接種」に分けられ、補償の内容も異なります。
【補償の概要】
定期接種 任意接種*
定義 予防接種法で定められており、国や自治体が接種を勧奨しているもの。
例:ポリオ、麻疹、風疹、ジフテリアなどのワクチン (1)定期接種以外で、日本で接種できるもの。
例:おたふくかぜ、インフルエンザ、B型肝炎などのワクチン
(2)定期接種でも法律で定められた期間外で接種する場合。
補償の考え方 「予防接種で起こったものではない」と明確に「否定」できないかぎり適応される。
具体的な補償金額
例:死亡時 約4,000万円 約700万円
給付金の出所 国(国民の税金から支払われる) ワクチン製造メーカーの拠出金
管轄の法律 予防接種法 独立行政法人医薬品医療機総合機構法
要注意!まったく補償のないワクチンもあります
安全性が確認され海外で広く使用されていても、日本では未承認のワクチンがあります。国内未承認のワクチンでも、医療機関が一定の要件を満たして輸入すれば、接種することができますが、国内未承認のワクチンで万が一健康被害が起きた場合は、予防接種法も独立行政法人医薬品医療機総合機構法も適応されません。
ワクチンによっては輸入業者が保険を設定している場合もありますが、現実には救済制度はないと考えておいたほうがいいでしょう。


E副反応に対する考え方
 ワクチンは、全く健康な体に異物を入れますから、ある程度の割合で副反応が起こることは避けられません。医療が発達してワクチンの製造技術が飛躍的に進歩してゆくにしても、人体に異物を与える限り、ワクチンの副反応はなくなりません。
 ワクチン、特にその副反応に対する考え方は時代や社会情勢によって大きく変わってきています。恐ろしい病気が流行している時は、その病気にかからないよう、人々は積極的にワクチンを受けようとします。そしてワクチンの副反応が起こっても比較的寛容になります。しかし、病気が流行していない時は、ワクチンへの関心が低くなり、しかもその副反応に対しては過敏になりがちです。

Fどうしてワクチンを受けないといけないの?
ワクチンを接種する目的には大きく分けて個人が自分を病気から守ることと、社会全体で病気を抑えこむことの2つがあります。
ワクチンを受けなければもちろん副反応と無縁になるわけですが、今度は病気にかかる危険性が高まります。病気にかかった場合、本人は命に関わる状態に陥るかもしれませんし、軽くすんでしまうかもしれません。また、たとえ本人は病気から回復できたとしても、その間、まわりの人達に病気をうつし続けています。その病気をうつされた人がどの様な状態になるのか全く予測がつきません。
つまり、ワクチンを受ける時には自分(赤ちゃん)のことだけではなく、家族や友人を含めた社会全体のことも考える必要があるわけです。こういうことをふまえて最終的にどのワクチンをどの様に受けるのかを決定するのは個人(子どもの場合は親御さん)に任されます。

G 現在問題のワクチンに関する考え方
現在、定期接種に含まれる子宮頸がんワクチンが副反応をめぐって社会問題化しています。特に問題になっているのは全身の痛みが長く続く慢性疼痛という症状です。
今のところ厚労省は「心身の反応によりひき起こされた症状が慢性化したもの」と考えてワクチンの完全中止を決断していませんが、実質的に中断されています。
当院では現在、子宮頸がんワクチンの接種を勧めていません。
その理由は以下の様です。
1. 子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)は感染してもほとんど自然に消えてしまいます。
2. このワクチンで予防できるHPVは60%ぐらいです。
3. 子宮頸がんはもともと子宮頸がん検診で予防可能な癌です。(HPVに感染してから子宮頸がんになるまで10〜20年かかるといわれています)
したがって原因不明の副反応をひき起こしているワクチンを接種する積極的な理由がありません。

H 子宮頸がん健診を受けよう!
日本で一番問題なのは、子宮頸がん健診の受診率が諸外国に比べて異常に低いことです。
この受診率をひき上げることに力を注ぐことこそ、現在もっとも重要なことだと考えます。