■ クループとボスミン2014.9.15


日本小児科学会から
クループに対するエピネフリン吸入は5〜10倍量でも安全
2008/5/13亀甲 綾乃=日経メディカル


 小児のクループに対し、通常用いられる量の5〜10倍のL体エピネフリン(以後エピネフリン、商品名:ボスミン液)を吸入させても、安全性に問題はなく、より速やかに症状を改善する――。そんな知見が、久留米大小児科による二重盲検比較試験により明らかになった。同科助教の木村光一氏が4月26日の日本小児科学会学術集会で発表した。

 小児のクループに対しては、現在、確立した治療ガイドラインが存在せず、木村氏らの調査によると、国内の大学病院の多くがエピネフリン0.1〜0.2mL/回の吸入を行っている。しかし、この吸入量では呼吸器症状の改善に乏しい経験をしばしば持つこと、また、海外では最大5mL/回の吸入が行われていることから、同科では、1mL/回という高用量を用いている。

 今回木村氏らは、この1mL/回という吸入量が、0.1mL/回と比べて治療効果に違いがあるか、また副作用の問題はないか、という2点について調べるため、二重盲検比較試験を行った。

 対象は、生後6カ月から3歳までの、軽症〜中等症のクループ児30人。これらの患児をエピネフリン0.1mL群(15人、生理食塩水と混合して計2mLを吸入)と1mL群(15人、生理食塩水と混合して計2mLを吸入)に振り分け、同一医師が吸入後120分までのクループスコア、心拍数、血圧を測定した。両群の背景因子(年齢、性別、体重、有症状期間、吸入前のクループスコア)に有意差はなかった。

 この結果、1mL群では、吸入15分後、30分後、60分後、120分後のすべての時点で、吸入前と比較してクループスコアの有意な改善が見られた。これに対し0.1mL群では、吸入30分後の時点でのみ有意な改善が認められたが、その他の時点では有意な改善が認められなかった。両群間の比較では、吸入30分後のlmL群のクループスコア改善度が、0.1mL群を有意に上回っていた。

 一方、吸入後の心拍数と血圧については、両群ともに有意な変動は見られず、エピネフリン増量の影響は認められなかった。

 木村氏は「現在頻用されているエピネフリン0.1〜0.2mL/回という吸入量では、クループ症状の早期改善に十分とは言い難い。今後さらに症例数を増やして検討する必要があるが、そのためには国内での多施設二重盲検試験の実施が望ましい」と話している。

iPadから送信