心肺蘇生法

心臓マッサージ30回 人工呼吸2回
人工呼吸と心臓マッサージなどによる「心肺蘇生(しんぱいそせい)法」。急病や事故で心臓と呼吸が止まった人がいたら、すぐに行えるよう、日ごろから身につけておきたい技術だ。その指針が改定され、やり方の一部が変更されることになった。 一般市民への指導はまだ先になりそうだが、ひと足先にそのポイントを紹介する。(山口博弥)

指針を改定 簡略化

 

人は、心臓が止まって3分、または呼吸が止まって10分放置しておくと、50%が死亡する。  呼吸停止から2分以内に人工呼吸を始めれば、90%が蘇生する。一方で、脳に酸素が送られない状態が3〜4分続くと、仮に蘇生しても重い後遺症が残る恐れがある。  1分の差は生死を大きく左右する。救急車が到着するまでの間、居合わせた人ができるだけ早く心肺蘇生法を行うことが、救命には不可欠だ。  心肺蘇生法の具体的な技法については、世界6地域の専門家団体で構成する「国際蘇生連絡協議会」が昨年秋、5年ぶりに新たな方針を示した。これを受けてわが国では、日本救急医療財団の心肺蘇生法委員会が、救急医療の専門医らで構成する小委員会を設けて検討を重ね、新たな指針をまとめた。  今回の改定の基本的な考え方は、1人でも多くの人が心肺蘇生法を行えるように手順を簡略化した点と、心臓マッサージの重要性を強調している点だ。  心肺蘇生法の手順はイラストで示した。改定のポイントを解説する。

 

【大人、小児、乳児とも、心臓マッサージで胸を連続して押す回数30回に対し、
人工呼吸で息を吹き込む回数は2回(30対2)に統一】

 

従来は、大人が15対2、小児や乳児は5対1だった。覚えやすくするとともに、心臓マッサージの連続回数を増やすことで、心臓や脳への血流を増やすのが狙い。

【人工呼吸で息を吹き込む時間は1秒】

 

従来は2秒だった。時間が短いほど、心臓マッサージを早く始められる。また、長めの吹き込みでは、心臓に戻る血液の量が減る恐れがある。

【循環のサインは確認しない】

 

最初に人工呼吸を行った後、従来は、呼吸やせき、体の動きといった「循環のサイン」を確認し、ない場合は心臓マッサージを始める手順になっていた。しかし一般市民がそれを確認することは難しく、心臓マッサージの開始が遅れてしまうため、省かれた。

【心臓マッサージの位置は乳頭と乳頭を結ぶ線の胸骨の上】

 

従来は肋骨(ろっこつ)の端から中央に指を滑らせて位置を決めたが、早く行えるように簡略化。

【小児の心臓マッサージを行う腕は片手でも両手でもいい】

 

従来、小児は片手による圧迫とされていた。しかし、小児の体の大きさや、助ける人の力の強さは様々。片手にこだわらず、胸の厚みが3分の1程度へこむ力で押せばいい。乳児はこれまで通り、指で押す。